この記事は、これから管理職になりたい方や、なってみたいけどまずはどんな仕事か知りたい方、なってはみたけどいろいろうまくいっていない方などを対象に、管理職の基本的な部分について記載しています。
読み終わるのにかかる時間は30〜40分程度です。
今後、さらに具体的な内容について書いていきたいと思いますので、興味のある方はぜひフォローをお願い致します。
それでは早速、説明してまいります。
管理職の基本
1. 管理職とは
管理職は、組織において業務の進行やチームのパフォーマンスを管理し、部下やプロジェクトを効果的にリードする役割を担うポジションです。
通常、管理職は部門やチームの成果に責任を持ち、組織全体の目標達成に貢献することが求められます。
一般的に、課長や部長、マネージャーといった役職が該当し、意思決定や戦略策定にも関わります。
2. 管理職の仕事
管理職の主な仕事は次の通りです。
- 目標設定と管理: 部門やチームの目標を設定し、それを達成するための計画を策定します。
- チームマネジメント: 部下の育成や業務割り当て、パフォーマンスの評価などを行い、チームのモチベーションを維持します。
- リソース管理: 人員、時間、予算などのリソースを最適に配分し、効率的に業務を進めるための管理を行います。
- 意思決定: 経営方針や業務の進め方について重要な判断を行い、必要に応じて上層部と協議します。
- 問題解決: チーム内外の問題を迅速に解決し、業務がスムーズに進行するようサポートします。
3. 管理職のメリットとデメリット
メリット
- 責任感と達成感: チームや部門の成功に大きく関与し、組織の成長に貢献できる達成感が得られます。
- キャリアの向上: 管理職の経験はキャリアアップにつながり、将来的により高いポジションへの昇進が期待できます。
- 収入の増加: 一般的に管理職になることで基本給やボーナスが増え、金銭的なメリットがあります。
デメリット
- 責任の重さ: 成果が期待される一方で、結果に対する責任も大きく、プレッシャーがかかることがあります。
- 人間関係の調整: 部下や上司との関係を円滑に保つことが難しく、人間関係に悩むこともあります。
- 業務量の増加: 業務管理や会議、報告業務が増えるため、ワークライフバランスが崩れることがあります。
4. 管理職に必要な知識
管理職として必要な知識には、次のようなものがあります。
- 業界知識: 業界の動向や競合分析、最新のビジネストレンドに関する知識が必要です。
- マネジメント理論: チームを効率的に管理するためのマネジメント手法やリーダーシップ理論を理解することが求められます。
- 組織運営: 組織の構造や意思決定プロセス、社内ルールに関する知識を持つことが重要です。
- 法律知識: 労働法やコンプライアンス、ハラスメントに関する法律知識も不可欠です。
5. 管理職に必要な能力
管理職に求められる能力は多岐にわたりますが、特に次の点が重要です。
- リーダーシップ: チームを牽引し、部下が主体的に動けるように導く力です。
- コミュニケーション能力: 部下や上司との円滑な情報共有と信頼関係の構築が求められます。
- 意思決定力: 限られた情報の中で、最適な判断を迅速に下す能力が必要です。
- 問題解決力: 業務や人間関係における問題を分析し、効果的に解決する力です。
- 柔軟性: 状況やチームメンバーの変化に応じて、適切に対応する柔軟な思考が求められます。
6. 管理職に向いている人
管理職に向いている人の特徴は次の通りです。
- 責任感が強い人: チームやプロジェクトの成果に責任を持ち、最後までやり遂げる姿勢がある人。
- 人間関係の調整が得意な人: 部下や上司とのコミュニケーションが円滑で、信頼を築ける人。
- ストレス耐性が高い人: プレッシャーや困難な状況でも冷静に対処できるメンタルの強さを持つ人。
- リーダーシップを発揮できる人: 他人を励まし、目標に向かって一丸となって進む姿勢を示せる人。
7. 管理職の悩み
- 部下の指導・育成
部下が思うように成長しない、指導が難しいなど、管理職としての育成に悩むケースが多いです。 - 仕事量の増加とプレッシャー
多岐にわたる業務と責任が増え、特に業績に対するプレッシャーがストレス要因となることがあります。 - 人間関係の調整
上司と部下の間に立つ立場であるため、双方の要望や期待を調整する難しさを感じることが多いです。 - 成果のプレッシャー
自分だけでなく、チーム全体の成果に責任を持つことから、目標達成へのプレッシャーが重くのしかかります。 - ワークライフバランスの崩れ
業務量が増えることで、プライベートの時間が削られ、家族との時間や自分のリフレッシュが難しくなることがあります。
具体的な知識・能力とフレームワーク
管理職の知識や能力と言われても、範囲が広すぎると思います。
以下は、筆者の経験から、管理職の仕事をざっくりカテゴリ分けしたものです。
「業績」「ES」「CS」「CSR」「人材育成」そして全体に共通する「マネジメント」に分けました。
会社や管理職の考え方によっては、別の整理もあると思いますが、筆者がなぜこの分け方をしているかというと、管理職の仕事をしていてやがて表面化してくる「課題」は、だいたいこれらのカテゴリにそれぞれ存在するからです。
分けているからと言って、それぞれまったく独立したものではなく、実はどれかのカテゴリが別のカテゴリにも関係してきたりします。
例えば、「業績」がなかなか目標達成できないのはなぜ?と悩むと、ついつい「とにかく即効性のある打ち手」を求めてしまいがちですが、目標達成できない原因を掘り下げていくと、チームのスキルやモチベーションが低かったり、市場や顧客から価値を認められていなかったり、部下にやらせっぱなしでフォローがたりていなかったり・・・など反省すべき点が浮かんできます。
浮かんできても、「今すぐにどうこうしたところで、目の前の業績目標が達成できるわけではない。とりあえず後で考えよう」となりがちです。
その時はそれでよいのですが、日々業績の数字に追われたりすると、結局ほかのことはいつまでも後回しで、実はそのせいで今の業績に影響しているとはなかなか考えません。
ここで言いたいのは、カテゴリ分けすれば目の前の業績が上がるというのではなく、直接・間接問わず業績に影響を及ぼす要素について、日頃からよく見てマネジメントしておくということです。
そうすることで、何かうまくいかないことがあっても、そのときのやり方の問題なのか、そもそも・・・というところの問題なのかを区別できます。例えば、家が傾いたのは土台や基礎の問題なのか、その上の家の建て方に欠陥があったのか。土台が傾いていたら、いくらその上を建て直しても傾いてしまいますし、それは無駄な努力です。
それに、役に立つかどうかわからないとしても、そもそもこれらのカテゴリは、会社が成長するためにすべて必要な要素です。会社は、それを部門に細分化して、それぞれの部門で管理をしてもらうために管理職を任命しています。
先送りにし続けるということは、高い給料をもらっていながら、管理をしていないのと同じことになります。
いくら業績を頑張っているとアピールしても、ある日とんでもないミスやクレームが来るかもしれません。それが会社に見えた時、会社からは「管理職は何をしているんだ」ということになります。
考え方はこのくらいにして、ともかくそれぞれのカテゴリに必要な知識・能力と、それに役立つフレームワークを挙げていきます。
1. 業績
必要な知識:
- 財務知識: 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフローに関する基礎知識を理解し、業績を評価できること。
- 市場分析: 自社の業界や競合に対する理解、マーケット動向の把握。
- 戦略立案: 中長期的なビジネス戦略の立案に必要な知識。
必要な能力:
- 意思決定力: 複雑なデータや状況を分析し、短期間で最善の意思決定を行う能力。
- リスク管理: 潜在的なリスクを事前に特定し、それに対する対応策を講じる能力。
- 分析力: データを解析し、業績向上のための施策を特定する能力。
役立つフレームワーク:
- SWOT分析: 組織の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を評価するフレームワーク。
- PDCAサイクル: 計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のプロセスを繰り返し、業績改善を目指す手法。
- バランスト・スコアカード(BSC): 財務、顧客、内部プロセス、学習と成長の4つの視点から業績を評価し、戦略を実行するフレームワーク。
2. ES(従業員満足度)
必要な知識:
- 人事制度: 給与、福利厚生、昇進システムなどの人事制度に関する知識。
- 心理学: 従業員のモチベーションやストレス管理、チームダイナミクスに関する基礎知識。
- 労働法: 労働条件やハラスメントなど、法的に従業員が守られるべき権利についての知識。
必要な能力:
- コミュニケーション能力: 従業員との信頼関係を築き、意見や問題を聞き出す能力。
- 共感力: 従業員の立場や感情を理解し、適切なサポートを提供する能力。
- モチベーション向上スキル: チーム全体の士気を高めるために、報酬制度や表彰制度を活用するスキル。
役立つフレームワーク:
- ハーズバーグの二要因理論: 動機付け要因(成長、達成感)と衛生要因(給与、労働条件)の観点から従業員満足を分析するフレームワーク。
- エンゲージメントサーベイ: 従業員満足度やエンゲージメントを測定するためのアンケート手法。
- マズローの欲求5段階説: 基本的な生理的欲求から自己実現まで、従業員が求める満足度を分析するための理論。
3. CS(顧客満足度)
必要な知識:
- 顧客ニーズの理解: 顧客が求める商品・サービスやトレンドを把握するための知識。
- マーケティング知識: 顧客行動や顧客ロイヤリティを向上させるためのマーケティング理論の理解。
- サービス品質管理: 顧客に提供するサービスや製品の品質を確保するための知識。
必要な能力:
- クレーム対応力: 顧客からの苦情や要望に迅速かつ丁寧に対応する能力。
- 顧客志向: 顧客の期待を超えるサービスや体験を提供するための視点と行動力。
- 問題解決力: 顧客の不満やニーズを理解し、それに応じた解決策を迅速に見つけ出す能力。
役立つフレームワーク:
- NPS(ネット・プロモーター・スコア): 顧客が企業や製品を他者に推薦する可能性を測定する指標。
- 5W1H分析: 顧客のニーズや不満の原因を「誰が」「何を」「なぜ」「どこで」「どのように」「いつ」起こるかの観点から分析する手法。
- 顧客満足度調査: 顧客のフィードバックを集め、満足度を定量的に評価するアンケートや調査手法。
4. CSR(企業の社会的責任)
必要な知識:
- 企業倫理: 法令遵守や道徳的な企業運営に関する知識。
- 環境問題: 企業がどのように環境保護に貢献できるか、持続可能なビジネス運営に関する知識。
- コミュニティ貢献: 社会貢献活動や地域社会への影響に関する理解。
必要な能力:
- 戦略的視点: CSR活動を企業の戦略に統合し、ビジネスの発展に繋げる能力。
- リーダーシップ: 社内外にCSRの重要性を認識させ、行動を促すリーダーシップ。
- 倫理的判断力: 利益追求と社会的責任のバランスを取り、適切な行動を選択する能力。
役立つフレームワーク:
- トリプルボトムライン: 経済的、社会的、環境的な3つの側面から企業活動を評価するフレームワーク。
- ISO 26000: 企業の社会的責任に関する国際規格。企業が社会的責任を果たすための指針を提供。
- サステナビリティレポート: 企業の社会的・環境的な活動を報告し、ステークホルダーに透明性を示すための手法。
5. 人材育成
必要な知識:
- 教育理論: 効果的なトレーニングや教育方法に関する理論。
- キャリア開発: 従業員のキャリアパスや成長機会に関する知識。
- パフォーマンス評価: 評価基準や方法に関する知識。
必要な能力:
- コーチングスキル: 部下が成長できるように、適切な指導やフィードバックを与えるスキル。
- メンタリング: 部下に対して長期的な視点で助言を与え、成長を支援する能力。
- 成長促進力: 従業員の弱点を強化し、潜在能力を引き出すための具体的なサポート方法を実行する力。
役立つフレームワーク:
- 70:20:10モデル: 人材育成の原則。70%は実務経験、20%は他者からのフィードバック、10%は公式な教育で学ぶというモデル。
- コーチングモデル(GROWモデル): Goal(目標設定)、Reality(現状認識)、Options(選択肢)、Will(意思)の4つのステップでコーチングを行う手法。
- KPI設定: 具体的な目標と指標を設定し、進捗を測定するための手法。
6. マネジメント
必要な知識:
- 組織行動論: 組織内の人々の行動を理解し、効果的に管理するための理論。
- プロジェクト管理: プロジェクトの計画、実行、監視、完了に関する手法やツールの知識。
- リソース管理: 人材、予算、時間などのリソースを最適に配分するための知識。
必要な能力:
- 計画力: 短期・中長期的な計画を立て、それを遂行する力。
- 調整力: 部門間や外部との協力体制を整え、全体を円滑に進めるための調整力。
- 問題解決能力: 発生する問題を分析し、チーム全体に影響を与える前に迅速に解決する力。
役立つフレームワーク:
- PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系): プロジェクト管理の知識体系で、リソース管理やリスク管理を含む。
- RACIチャート: 誰が責任を持つかを明確にする役割分担のツール。Responsible、Accountable、Consulted、Informedの頭文字から成る。
- SMART目標設定: Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限がある)の原則で目標を設定する手法。
「多すぎてそんな知識や能力を身につけるなんて無理。フレームワークも全部覚えていられない!」と思いますよね・・・。
これを全部覚えて身につけている現場の管理職は、筆者も会ったことがありませんし、筆者自身も覚えきれません。
でも、これらのフレームワークは、一度フォーマットを作ってしまえば、その内容を書いたり修正したりするだけです。このフォーマットは覚えるためではなく、実際に自分の組織のありたい姿や目標設定、そして達成に向けた計画と進捗管理のために使います。
要は、マネジメントとは、その作業そのものとも言えます。プロジェクトマネジメントなどはあるプロジェクトに関してひたすらそれをやっているようなものです。そう考えると、常にそれらのフォーマットを見ながら機械的にPDCAすることになるので、忘れてしまうこともありません。
一度に全部は作れないとしても、計画を立てて一つずつでも作っていけばいいし、最初は簡略化したものでよいと思います。
そして、これがあると、自分が何をどのように管理しているかを上司に示すことができ、努力を認めてもらえるし、ピンポイントでアドバイスをもらうこともできます。
口だけで「やってます!頑張ってます!」という管理職をたくさん見てきました(筆者も若い頃はそうでしたw)が、そういう人ほど何も示せないので、「精神論はいらない!」とか怒られたり、お説教されがちです。
いかがでしたか。
今回は、一般論のサワリの部分に多少筆者の考えを混ぜてご紹介しましたが、まずは「管理職ってどんな仕事?」のアウトライン的なものは伝わったでしょうか。
これから管理職を目指す方や、目の前の仕事に追われて本来の管理職の仕事がわからなくなってきた方など、このブログが少しでもお役に立てる事を願っています。
ご質問やお悩み、ご意見・感想などコメントいただけるとうれしいです。
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