9/17放送のNHK「クローズアップ現代」のテーマは、「ミッドライフクライシス」でした。
出演した小泉今日子さん(58)も、おそらくミッドライフクライシスと思われる自身の経験を語られていました。
「ミッドライフクライシス」とはどのようなものでしょうか。また、誰にでも関係のあるものなのでしょうか。
ミッドライフクライシスとは
ミッドライフクライシスとは、主に中年期(40~50歳頃)に差し掛かった人々が経験する心理的な不安や混乱、危機感を指す概念です。
この状態は、人生の半ばに達したときに、自分の過去や将来について深く考え、自己のアイデンティティや人生の意義に疑問を抱くことから生じます。
「第二の思春期」と呼ばれることもあるので、ほとんどの人がそれに近い状態になる可能性があります。
ミッドライフクライシスの主な特徴
- 人生の再評価: 自分のこれまでの人生の選択や達成、成功を振り返り、「これでよかったのか?」と疑問を持つ。
- 加齢による身体的・精神的変化: 身体能力や健康が衰え始める一方で、精神的にも疲労やモチベーションの低下を感じることがある。
- 時間の有限性の認識: 残りの人生が有限であることに気付き、「もっと意味のあることをしたい」と感じる。
- キャリアや家庭生活の見直し: 仕事の充実感や家庭内での役割について疑問を持ち、キャリアの変更や離婚を考える場合もある。
ミッドライフクライシスの主な症状
- 不安や抑うつ: 将来やこれまでの自分の選択についての不安や後悔を感じる。
- イライラや感情の不安定: 些細なことに過敏になり、感情が不安定になる。
- 衝動的な行動: 突然の転職や趣味、生活の変化を求めるなど、衝動的な行動をとることがある。
- 対人関係の変化: パートナーや家族、友人との関係に問題が生じることがあり、人間関係に疎遠になることも。
原因
- 社会的プレッシャー: 家庭やキャリア、成功に対する社会的期待に押しつぶされそうになる。
- 加齢: 加齢による身体の衰えや健康問題が心理的な不安を引き起こす。
- ライフイベントの変化: 子供の独立や退職、親の死など、人生の大きな転換期に直面することで危機感が高まる。
ミッドライフクライシスへの対処法
- 自己の再発見: 自分の価値観や目標を見直し、これまでと異なる新しい趣味や活動を探求する。
- カウンセリングやセラピー: 専門家のサポートを受けることで、感情や心理状態を整理し、前向きな対処方法を見つける。
- 家族や友人との対話: 身近な人々と率直に気持ちを話し合い、サポートを得ることで安心感を得る。
ミッドライフクライシスは自然なプロセスであり、必ずしもネガティブなものではなく、自己成長や人生の新たな方向性を見つける機会にもなり得ます。
いつから広まった?
ミッドライフクライシスという概念は、1965年にカナダの心理学者エリオット・ジャック(Elliott Jaques)が初めて提唱しました。
彼は論文「Death and the Mid-life Crisis(死と中年の危機)」で、中年期に人が自分の死の現実を認識し、これが心理的な危機を引き起こすという現象を指摘しました。
この論文をきっかけに、「ミッドライフクライシス」という言葉が広く使われるようになりました。
ジャックの研究は、主に芸術家や創造的な仕事に従事する人々が40代に入ると作品のスタイルやテーマが変わり、時には創作活動そのものに対する意欲が低下するという観察から生まれました。
彼はこの現象を個人が加齢とともに自己の限界や死に対する意識が高まり、心理的な転換点を迎えるものだと位置付けました。
その後、1970年代に心理学者や精神分析学者たちによってさらに研究が進められ、特にアメリカの心理学者であるダニエル・レヴィンソン(Daniel Levinson)が、人生の発展段階における中年期の危機について理論を展開し、広く一般に認知されるようになりました。
このように、ミッドライフクライシスは1960年代から1970年代にかけて学術的に認識され始め、その後、一般社会に浸透していったのです。
「なんてったってアイドル」だった小泉今日子さんのいま
アイドルから女優へ
筆者も少年時代代ファンだった、小泉今日子さん。部屋にはポスターも貼っていました。
当時、すでにアイドル歌手というよりは歌姫として君臨していた松田聖子さん、中森明菜さんに次ぐ人気でした。
ある時、小泉さんはスタッフにも断りなく、それまでアイドルの定番だったヘアスタイル「聖子ちゃんカット」から、勝手にショートカットにしてしまいます。
そのことはかえって小泉今日子の存在感を高めたように思いますが、その行動自体、自分で思った事を自分で決めるという彼女の生き方を象徴していると思います。
その後、たくさんのCMや女優、執筆などマルチに活動し、常に自分の言葉で正直に話す人柄も含め、高い好感度を保っています。
私生活
1995年に俳優の永瀬正敏さんと結婚、2004年に離婚。お子さんはいません。
その後、2018年に俳優の豊原功補さんと交際していることを明らかにしました。お二人で映像プロダクションを設立しています。
とても仲の良いタレントのYOUさんとの対談をした際、自身が子供を持たなかったことについて、「一体世の中に対して何ができるんだろう?」と考えてしまうと話していました(対談集「小泉放談」(宝島社文庫)、当時51歳)。
YOUさんが母として息子を立派に育てたということを引き合いに出しての発言なので、そこには(生物学的な意味で)母親としての役割に対するリスペクトのようなものが感じられます。
本来であれば子供を持つかどうかはプライベートなことで、それが世の中に対して何かをしていると思う人はそんなに多くないような気がしますが、「世の中に対して何が」という言葉を使うところが、なんと責任感の強い方なのだろうという印象を持ちました。
一方では、「産まなくては」というプレッシャーを感じていたのかもしれないと思います。生きてきた年代的に、どこか無意識でも「昭和的価値観」が根を張っているのかな、という気もわずかにしました。
真意はご本人にしかわかりませんし、このような発言がミッドライフクライシスだからかどうかはわかりませんが、先述の特徴で言う「人生の再評価」の例にも見えます。
筆者自身、本当につい最近このようなブログや新しい趣味を始めたりしているのも、まさにミッドライフクライシスそのままだと感じています。
これを寂しいことと感じるかどうかは人それぞれだと思いますが、少なくとも筆者は、得体の知れないイライラや焦りのようなものの正体がわかっただけでもだいぶ気が楽になりました。
思えば「第一の思春期」で人生に対する不安や恐れがあったとしても、実際にいろんな壁や問題に当たっても、なんだかんだ言いながらなんとかやってきた。あの頃よりは知恵も経験もあるのだし、もう少しうまく生きていくことができるのではないか。そう思って、もっと力を抜いて楽しんでいこうと思いました。
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