先日、このブログで↓
について書いたばかりですが、
明日9/16の「敬老の日」を前に総務省が「統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者」という資料を発表しました。
そこから詳細の資料のリンク(PDF)を辿ると、以下のような概要が記載されています。
- 総人口が減少する中で、65歳以上人口は3625万人と過去最多
総人口に占める割合は29.3%と過去最高
そして、ただ単にその人口が多いというだけでなく、その中でも働く人が増え続けていてるという指摘もありました。
・・・だから何?というか、何が言いたいのかよくわかりませんが、皆さんはどう感じたでしょうか?
高齢者の割合が多い理由
これは説明するまでもなく、高齢者の人口に対して「少子化」が続き、若い層が少なくなっているためです。
このような状態において、もっと子供が増えれば・・・という支援も議論されていますが、なかなか簡単に増えていかないようです。
このような議論においては、「もっと子供を産むべき」という考えが前提にあるように感じますが、はたしてそうなのでしょうか?
そもそも、今の高齢者が多くて、その下の世代が少ない理由は何でしょうか。
第一次ベビーブーム 1947〜1949年 団塊の世代
第二次世界大戦後に、反動のように一時的に子供を作る人が増えました。この現象は日本に限らずアメリカやその他の国でも起こったようです。
ちなみに、この頃に生まれた「団塊の世代」は、2024年時点で70代になっています。
出生数で見ると、第二次世界大戦(1939〜1945年))中の1943年には約230万人ほどですが、1947〜1949年の3年間には毎年約260〜270万人、計約800万人となっています。
もちろん、今1億以上の人口なので、800万人多くなったところであまり変わらないような感じですが、平均寿命も1955年から2019年までに+20年と伸びているので、どちらかといえば少子化より長寿化の影響が多いようにも見えます。
ただし、2019年の出生数は90万人を下回り、1949年の3分の1となっていますので、やはり少子化のインパクトもあります。
1949年をピークに、出生数は徐々に下がり始め、1957年に157万人まで減少します。
ところが、この減少のペースは、戦前の出生数の動きと比べてあまりにも急すぎます(むしろ、戦前はゆるやかに増加していました)。
戦後間もない時期ということもあり、戦前の出生数まですぐに戻るということはないと思いますが、参議院の調査資料によると以下のような記述もありました。
昭和32(1957)年の出生数 157 万人に対し、人工妊娠中絶数は 112 万件であり、両者を足すと潜
在的な出生数は団塊出生時と変わらない。人工妊娠中絶の大規模な実施がベビーブームを
短期間に終わらせた(以下略)
今回の投稿では高齢者にフォーカスするので、中絶に関する詳細は省略しますが、ともかくそのようなこともあったようです。
1957年以降、出生数は再び増加に転じます。
やがて第一次ベビーブームの時に生まれた世代が親になります。
第二次ベビーブーム 団塊ジュニア
1971〜1974までの4年間は、第一次ベビーブーム世代が子供を産む年代となり、出生数が200万人を超える時期となりました。この時期が第二次ベビーブームと呼ばれます(筆者はこれよりほんの少し早く生まれましたが、世代としてはほぼ同じ感覚です)。
しかし、このブームの後で、それ以前の水準に戻るかというと、またまた急な勢いで出生数が下がります。そして、現在まで減少の一途です。
ピークとなった1973年は、「オイルショック」が起こりました。第四次中東戦争の影響で、中東の産油国が原油価格を70%引き上げ、物価が急上昇したのです。そして、1974年は、戦後初のマイナス成長となりました。
2024年の今これを書いていて、「今も似たようなことが起きている」と思うと、出生数の増加に期待する気持ちが弱気になってきます。
ちなみに筆者の両親はすでに他界しているので、その当時の話を直接聞くことはできません・・・。
団塊ジュニアは2024年時点で50代です。
第三次ベビーブームは?
第二次ベビーブームの世代が親になったはずなので、そこで第三次ベビーブームが起こるのでは?と当時も考えられたようですが、そうはなりませんでした。
少し上の世代が親になる頃は、バブル時代です。我々団塊ジュニアはそれがはじけた頃に社会に出ることになったわけですが、この時期が「就職氷河期」となってしまったわけです。
時代も昭和から平成へ、日本の経済も大きく条件が変わってきます。「グローバル化」です。
それまでモノを作るのがメインだったのが、安価な海外製品が入ってきて、売れなくなり、企業の業績も悪化。採用控えとなったわけです。
さらに消費税がスタートするなど、若者にとっては非常に厳しい時代に変わりました。就職ができなかった人もたくさんいます。
高齢者はどうなっていくのか
出生数は、緩やかな波のように増えたり減ったりしているわけではないこと、そしてずっと減少し続けていることがわかりました。
今70代半ばの「団塊の世代」は、平均寿命で考えると男性はあと10年、女性は17年ということになります。
10年後(2034年)には、団塊ジュニアがおよそ65歳くらいです。団塊の世代ほど多くはないとしても、そこから15〜20年くらい(2050〜2055年ごろ)まで生きるでしょう。
今から20年後の2044年頃には、団塊ジュニアが75歳前後で、今と同じような(やや少ない)状況です。
医療費や年金の負担について議論されていますが、あと20年このままの状態が続く(高齢者が減少するのを待つ?)のか、それとも20年以内に何かを変えるのか。
ここではこれ以上書ききれませんが、まとめると、「少子高齢化」というより「少子化+長寿化+ベビーブーム」によって高齢者の割合が多い、ということです。そのこと自体はなんの不思議もないし、問題はそのことによるバランスであって、そしてそれは若者が高齢者を支えるという前提の制度設計が、「少子化+長寿化+ベビーブーム」にそぐわなくなっているということです。
このうち、「ベビーブーム」の部分は先ほど書いたようにあと20年の話、「長寿化」の部分は最近物議を醸した「老人は早くいなくなれ」というような意見、「少子化」の部分は「育休や手当」のような施策になっていると思います。
それぞれできることは早くやった方が当然よいですが、あらためて書いてみると、やはり全体的な制度設計が変わらない限り、「切り捨て」や「個々の改善・工夫」といった、根本的解決に見えない方向にいくような気もします。
今回の自民党総裁選を見ても、各論について意見を戦わせているような印象が否めません。
先日このブログでも総裁選出馬の意思表明をした方々の年齢を調べましたが、決して他人事ではない世代の方がほとんどなんですけどね・・・。
ところで・・・
先日ファーストリテイリングの柳井さんが「日本人は滅びるんじゃないか」というようなことを発言されて、議論になった際、そういえばイーロン・マスク氏も「少子化が続けば日本は滅びる」ようなことを言っていたことを思い出しました。
日本の次に高齢者が多いとされるイタリアでも↓まんま「日本」を「イタリア」に置き換えたような状況ですね。笑い事ではないですが、マスク氏の発言まで・・・(笑)
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