イグノーベル賞とは
イグノーベル賞(Ig Nobel Prize)は、科学的なユーモアと知識の境界にある「不可能そうでありながら、実際には実現している」研究や発見に贈られる賞です。
1991年から毎年、米国の科学ユーモア雑誌「Annals of Improbable Research」が主催しており、ハーバード大学での授賞式が行われます。
先日投稿した↓の記事で使われたモスキート音も、すでにそのような装置を作っていたイギリスのハワード・ステイプルトンという人が2006年に平和賞を受賞しています。
イグって何?
「イグ」は、英語の「ignoble(イグノーブル)」、つまり「卑しい」や「軽蔑すべき」という意味の言葉の一部です。
nobleは「高貴な」という意味ですが、nobleに否定の接頭辞igをつけたものがignobleです。
さらに、nobleをnobelにかけて、ignoble となったというわけです。
したがって、「イグノーベル賞」は、「栄誉あるノーベル賞」の反対のイメージとして「ちょっと変わった」「奇抜な」研究に贈られる賞という意味を持つ、ユーモラスな造語です。
主な受賞国
代表的な受賞国:
- アメリカ:イグノーベル賞の設立国であり、毎年最も多くの受賞者を輩出しています。アメリカの研究機関や大学から、ユーモラスかつ興味深い研究が多数受賞しています。
- 日本:日本の研究者たちも多数受賞しており、特にユニークな研究で注目を集めています。例えば、「コケシ人形の顔の変遷に関する研究」や「ワサビの香りで目を覚ます装置」などが受賞しています。
- イギリス:イギリスの科学者も多くのイグノーベル賞を受賞しており、奇抜な研究でよく知られています。例えば、トーストがバターを塗った面で落ちる確率の研究などが受賞しました。
- オランダ:オランダの研究者たちは、心理学や生物学などの分野で多くの受賞を果たしており、特に人間の行動に関する研究で注目されています。
- ドイツやオーストラリアなども、少数ながら毎年受賞者を輩出しており、国際的に多様な研究が評価されています。
日本人の受賞歴
カテゴリ 受賞者 受賞理由
1992年 医学賞: 横浜の資生堂研究所の神田文雄、八木栄治、福田正之、中島一成、太田孝之、中田修
・先駆的な研究「足の悪臭の原因となる化学物質の解明」、特に、足の悪臭があると思う人は実際に 足の悪臭 があり、そう思わない人は実際には足の悪臭がないという結論を導き出したことに対して。[ British Journal of Dermatology、第122巻第6号、1990年6月、771-6ページに掲載]
1995年 心理学賞: 慶応義塾大学の渡辺茂、坂本順子、脇田真澄の3氏
・ハトにピカソとモネの絵画を区別させる訓練に成功した
1996年 生物多様性賞:名古屋市にある岡村化石研究所の岡村長之助氏
・恐竜、馬、竜、王女、その他1000種を超える絶滅した「小型種」の化石を発見した。各化石の体長は1/100インチ未満である。
1997年 経済学賞: たまごっち の生みの親である、千葉県ウィズカンパニーの横井昭弘氏と東京の バンダイカンパニーの舞田亜紀氏
・バーチャルペットの飼育に何百万時間もの労力を費やした
1997年 生物学賞: スイスのチューリッヒ大学病院、日本の大阪にある関西医科大学、チェコ共和国プラハにある Neuroscience Technology Research の T. Yagyu、J. Wackermann、T. Kinoshita、T. Hirota、K. Kochi、I. Kondakor、Thomas König、Dietrich Lehmann ら
・異なる味のガムを噛んでいる間の人の脳波パターンを測定しました。[「チューインガムの味は多チャンネル EEG の全体的な複雑性の尺度に影響を与える」として出版、T. Yagyu ら、 Neuropsychobiology、vol. 35、1997、pp. 46-50。]
1999年 化学賞: 大阪の セーフティー探偵社社長、牧野武氏
・妻が夫の下着に吹きかける浮気発見スプレー「S-Check」の開発に携わった。
2002年 平和賞: タカラ株式会社代表取締役社長 佐藤 啓太氏、日本音響研究所代表取締役 鈴木松美博士、 小暮動物病院専務理事 小暮 則夫博士
・コンピューターベースの 犬と人間の自動言語翻訳装置「ボウリンガル」 を発明し 、人類間の平和と調和を促進した
2003年 化学賞: 金沢大学の 広瀬幸夫氏
・金沢市にあるハトを誘引しない銅像の化学的調査に対して受賞した
2004年 平和賞: 兵庫県の 井上大助氏
・カラオケを発明し、人々が互いに寛容になることを学ぶ全く新しい方法を提供した
※筆者註:実際は他の方が発明し商用化していたため、ビジネスとして成功した方と見られています
2005年 栄養学賞:
・東京の 仲松義郎博士 34年間(現在も継続中)に摂取したすべての食事を写真に撮り、回顧的に分析しました。[映画「仲松 博士 の発明」を参照、2009年]
2005年 生物学賞: オーストラリアのアデレード大学、カナダのトロント大学のベンジャミン・スミス氏、スイスのジュネーブにあるフィルメニッヒ香水会社、フランスのアルシャンにあるケムコム・エンタープライズ社 のベンジャミン・スミス氏、ジェームズ・クック大学と南オーストラリア大学の クレイグ・ウィリアムズ氏、アデレード大学のマイケル・タイラー氏、アデレード大学のブライアン・ウィリアムズ氏、オーストラリアワイン研究所の早坂洋二氏 ・131種のカエルがストレスを感じたときに発する特異な匂いを丹念に嗅ぎ分け、分類しました
2007年 化学賞: 山本真由氏
牛糞からバニラの香りと風味料であるバニリンを抽出する方法を開発した
2008年 認知科学賞: 北海道大学の中垣俊之氏 、名古屋大学の山田宏康氏、広島大学の小林亮氏、JSTさきがけの手老篤氏、東北大学の石黒明夫氏、 ハンガリーのセゲド大学のアゴタ・トート氏
・粘菌がパズルを解くことができることを発見した
2009年 生物学賞: 北里大学大学院医学研究科の田口文明氏、宋国富氏、張光雷氏の3名
・ジャイアントパンダの糞便から抽出した細菌を使用することで、台所ゴミの質量を90%以上削減できることを実証した
2010年 交通計画賞: 中垣俊之、 手老篤、高木誠二、三枝哲、伊藤健太郎、弓木健二、小林亮(日本)、 ダン・ベバー、 マーク・フリッカー (イギリス)
・粘菌を利用して鉄道の最適ルートを決定した
2011年 化学賞: 今井誠、漆畑直樹、種村秀樹、田島幸伸、後藤英明、溝口耕一郎、村上純一
・火災などの緊急事態の際に眠っている人を起こすために空気中に漂うワサビの理想的な濃度を決定し、この知識を応用して ワサビアラームを発明した
2012年 音響賞: 栗原一孝氏 と 塚田幸治氏
・スピーチジャマーを開発した。スピーチジャマーは、自分の話した言葉をごくわずかに遅れて聞かせることで、人の会話を妨害する機械である。
2013年 化学賞: 今井慎介 [日本]、柘植伸昭 [日本]、友武宗明 [日本]、永留義明 [日本]、澤田秀行 [日本]、永田敏之 [日本、ドイツ]、 熊谷秀彦 [日本]
・タマネギが人を泣かせる生化学的プロセスが、科学者がこれまで認識していたよりもさらに複雑であることを発見したことに対して
2013年 医学賞: 内山正輝 [日本]、金向元 [中国、日本]、張其 [日本]、平井俊人 [日本]、天野篤 [日本]、馬生田尚志 [日本]、新見 正則 [日本、イギリス]
・心臓移植患者マウスに対するオペラ鑑賞の効果を評価した
2014年 物理学賞: 馬渕潔、田中健成、内島大地、坂井里奈
・床に置かれたバナナの皮を人が踏んだときに、靴とバナナの皮の間、およびバナナの皮と床の間の摩擦量を測定した
2015年 医学賞: 木俣 一[日本、中国]、他 Jaroslava Durdiaková [スロバキア、米国、英国]、Peter Celec [スロバキア、ドイツ]、Natália Kamodyová、Tatiana Sedláčková、Gabriela Repiská、Barbara Sviežená、Gabriel Minárik [スロバキア]
・生物医学的利点または生物医学的影響を研究する実験のため激しいキス(およびその他の親密な対人活動)
2016年 知覚賞: 東山篤志 と足立公平
ろかがんで足の間から物を見ると違って見えるかどうかを研究しました
2017年 生物学賞: 吉澤一典、ロドリゴ・フェレイラ、 上村佳孝、 チャールズ・リーンハルト
・洞窟昆虫における雌のペニスと雄の膣の発見に対して
2018年 医学教育賞: 堀内 明
・医学報告書「座位での大腸内視鏡検査: セルフ大腸内視鏡検査から学んだ教訓」に対して
2019年 化学賞: 渡辺茂、大西峰子、今井香織、河野栄治、五十嵐誠司
・典型的な5歳児が1日に分泌する唾液総量の推定に対して
2020年 音響学賞: ステファン・レーバー、西村武、ジュディス・ヤニッシュ、マーク・ロバートソン、テカムセ・フィッチ
・ヘリウム濃縮空気で満たされた密閉室でメスの中国ワニを鳴き声で鳴かせることに成功した
2021年 キネティクス賞: 村上久、クラウディオ・フェリチャーニ、西山雄太、西成勝弘
・歩行者が他の歩行者と衝突することがある理由を解明するための実験を行った
2022年 工学賞: 松崎元、大内一雄、上原勝、上野善之、井村悟郎
・ノブを回すときに指を使う最も効率的な方法を発見しようとした
2023年 栄養学賞: 宮下鳳明と中村裕美
・電気を通した箸とストローが食べ物の味をどのように変えるかを調べる実験に対して
2024年 生理学賞: 岡部亮、豊文・F・チェン=吉川、米山洋介、横山雄平、田中聡菜、吉沢明彦、ウェンディ・L・トンプソン、ゴクール・カンナン、小林英二、伊達博、武部隆則
・多くの哺乳類は肛門を通して呼吸することができます
いかがでしたか。
印象とは違い、決してふざけた研究をしているわけではないのですね〜!
遊び心というわけでもないと思いますが、やはり仮説でまったく想定していなかったことから何かが発見されることも実際にあるし、いろんな視点や角度でものごとを見ることも必要だと思いました。
本当に役立っているならなおさらですね。今後も楽しみにしていきたいと思います。
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